ベタの飼育環境

 昨日、近くの海の河口へ潮干狩りに行ってきました。アサリはあまり採れませんでしたが、羽を怪我したコブハクチョウが一羽浮かんでいるのを見かけました。
 
 そのコブハクチョウは人間慣れしているらしく、私達が海へ向かっていると自ら近寄ってきました。
 
 コブハクチョウは元々外来種のため、日本には生息していません。察するに、以前は人間に飼われていた、いわゆる籠抜けというやつか、あるいはその子孫で人に餌付けされているのでしょう。
 
 ハクチョウが単独で行動するのは珍しいので、羽を怪我して仲間に置いていかれたのでしょうか。何れにせよ、寂しそうに見えました。今度行くときは、パンの切れ端でも持って行ってあげようかな。

 

 

 さてさて、今日はベタの飼育環境について少しお話したいと思います。
 
 皆様も一度くらい見かけたことがあるかと思いますが、ベタはホームセンターやペットショップなどで瓶などに入れられて売られている魚です。
 
 無加温、無濾過、瓶で飼育可能!なんて売り文句で心惹かれた方もいるのではないでしょうか。
 
 これについては不可能ではありません。しかし、無加温、無濾過、瓶での飼育には一定の条件があり、そしてそれは、ほとんどの場合初心者には困難です。

 

 確かに、ブリーダーや一部ショップではそのように売られているベタもいます。しかし、多くの場合、水温調整には空調で、濾過には毎日の換水で対応しているのです。瓶飼育については、売れるまでの短期間ならば可能という程度ですね。
 
 中には換水すらもされずに売られているベタもいます。ホームセンターなどで売られているベタですね。ベタを飼ったことのない人には見ても分からないことが多いのですが、彼らのほとんどは入荷直後でもない限り、鰭が癒着してしまっていたり、何らかの健康不良を起こしている個体ばかりです。このような状況は、ホームセンターに併設されているペットショップなどでも多く見られます。

 

 なぜ魚を売るプロがこんな間違いをするのか、と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。理由は簡単、売りたいからです。ショップの人間は、一度仕入れてしまった以上売り捌いてしまわなくてはいけません。入荷して時間が経てば経つほど魚の観賞価値は下がっていくので、ショップは何としても売りたい。売るにはどうしたらいいのか。そうだ、ベタを飼育したこともない知識の少ない素人に売ろう。その結果が、無加温、無濾過、瓶飼育の売り文句、となるのです。時にはショップ店員の知識不足、ということもございますが。
 
 ベタを飼ったことのある人は分かると思いますが、無加温、無濾過、瓶飼育で健康に育てられるほど、ベタは容易ではありません。その売り文句に乗せられて購入してしまった人ほど「聞いてた話と違うじゃないか!」と、ベタ飼育の難しさを思い知ることになります。

 

 

 以前もお話ししましたが、ベタはタイ原産の熱帯魚です。日本のほとんどの地域では、無加温で飼育できる時期は夏だけです。ベタは低水温になると餌を食べなくなったり、病気になる確率が急上昇します。24時間空調で室温を25度前後に保っているご家庭以外は(そんな家庭はほとんどないと思いますが)20度を下回ってしまう秋から春にかけては、ヒーターが必須アイテムと言っていいでしょう。

 

 水棲生物を飼育する上で最も重要なことの一つに、水質があげられます。日本の水道水のph(水溶液中の水素イオン濃度を表す指数)は概ね中性なので、熱帯魚を飼育するのにはほとんど問題はありません。しかし、浄水施設で消毒をする際に、塩素(カルキ)が用いられ、この塩素が生体に悪影響を及ぼします。塩素は、熱帯魚用の中和剤(カルキ抜き)を使用するか、水道水をバケツなどの容器に入れ日光に数日間さらすことでほとんどが無害化されます。私の家では週に一度換水を行なっているので、その際に汲み置きをしておきます。

 

 更に、水槽で生体を飼育していると、アンモニアや亜硝酸塩、硝酸塩といった有害物質が発生します。これらを詳しく語ると日が暮れてしまいますので、今日は簡単にお話ししたいと思いますが、アクアリウムを語る上では欠かせない要素ですので、各々で調べてみることをオススメします。

 

 さて、これら有害物質の除去方法ですが、最も簡単な方法は換水です。有害物質を含む古い水を捨て、新しいフレッシュな水を入れることで、綺麗な水質を保つことが可能になります。
 
 しかし、ここでもまた難しい問題が発生します。フィルターを設置して、濾過が行き届いている水槽ならば、週に一回、二週間に一回の換水で済ませられる訳ですが、無濾過であればそうはいきません。瓶などの少量の水で飼育する場合は、ほとんど毎日換水しなければならないでしょう。そうなってくると、簡易フィルターでも設置した方が世話が容易になるわけです。

 

 水質には、初心者が陥りやすい罠が隠れています。
 
 糞とか食べ残しならすぐに取り除けばいいし、水が濁ったら換水すればいいんでしょ?と思ったそこのあなた。一見透明で綺麗に見える水にも、多くの有害物質が潜んでいます。
 
 先ほど述べたアンモニアという物質は、生体に与える餌の食べ残しや糞などから発生します。実は生体にとって、これが一番の猛毒だったりします。アンモニアの怖いところは、目に見えないところです。水が透明だから大丈夫だろう、と思って換水を怠っていると酷い目を見ますよ。

 

 水槽内の濾過は大きく分けて2種類あります。一つは、糞や餌の食べ残し、水草の残骸などを物理的に漉し取る物理濾過と呼ばれるもの。もう一つは、アンモニアなどの有害物質をバクテリアに分解してもらう生物濾過というものです。
 
 多くのアクアリストにとって、この生物濾過こそが最も重要な要素の一つでもあります。

 

 生物濾過が機能するのに欠かせないものが、バクテリアの存在です。先ほど述べたように、水槽内に生体が存在するだけで、アンモニアなどの有害物質が発生します。これらの有害物質を分解して無害化してくれる存在がバクテリアなのです。

 

 生物濾過には大きく分けて3つのサイクルがあります。

 

 第一段階は、糞や食べ残しから発生した猛毒の【アンモニア】を、〈ニトロソモナス〉と呼ばれるバクテリアが分解します。分解された【アンモニア】は、少し毒素の弱い【亜硝酸塩】という物質に変わります。

 

 第二段階では、【アンモニア】が分解され発生した【亜硝酸塩】という物質を、〈ニトロスピラ〉というバクテリアが分解します。分解された【亜硝酸塩】は、次に【硝酸塩】という毒素の極めて弱い物質に変わります。

 

 この【硝酸塩】という物質は、水草などに吸収されますが、多すぎると生体にも多少影響を及ぼしますし、何より苔の大量発生につながりますので、水草が少ないあるいは水草を植えていない場合、換水によって水槽外に排出します。

 

 アンモニア→亜硝酸塩→硝酸塩

 

 上記のようなサイクルによって、アンモニアから連なる3つの有害物質は無害化されていきます。フィルターを設置している場合、アンモニアと亜硝酸塩を分解するバクテリアが濾材に定着するまでの期間が、水槽立ち上げからおよそ一か月というところが目安でしょうか。

 

 先ほど述べたように、これらの毒素は毎日の換水によっても一定数は減らすことが可能です。しかし、頻繁な換水は水槽内の生体にダメージを与えてしまう恐れがありますし、なにより手間がかかって途中で放棄……なんてことになりかねません。

 

 確かに、ベタは難しい魚よりは飼育しやすいかもしれませんが、無加温・無濾過・瓶で飼育できるほど簡単ではない、というのが長年ベタを飼育してきた私の意見です。

 

 ベタ愛好家としては、出来る限り整った環境で飼育してあげてほしいものです。

 

 

 こんなに可愛いのに、狭いところで飼うのはもったいない!

 

 簡潔に済ませるはずが、長々と高説を垂れてしまい申し訳ないことでございます。

 

 それでは皆様、善きベタライフを。

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Bettallica

永遠のアクアリウム素人が小型水槽で熱帯魚ベタを飼育する備忘録。